21世紀COEプログラム「古代日本形成の特質解明の研究教育拠点」は、古代日本の形成過程とその特質を多面的に解明しようと、活動を進めてきました。このなかで、藤原京・平城京が営まれた時期を中心に、先史から歴史時代における奈良盆地の景観復原的研究も行われてきました。古代学・聖地学研究センター(旧 古代学学術研究センター)は、COEプログラム活動修了後、その研究活動を継承して行っております。
平城京・藤原京・飛鳥などの宮都地域に関する史料には、条坊の坪付など位置に関する情報が多く残されています。また、近世末以来の、北浦定政の平城京条坊復原をはじめとした研究や、発掘調査などの多くの蓄積があります。奈良盆地全体を見渡しても、やはり発掘調査の成果や条里遺構、古地図・絵図、地名などの豊富な資料が残されています。
これらのうち発掘調査により検出された遺構や、描かれた場所が明らかな古地図・絵図などは、位置データをともないますので地理情報となります。また、文献史料もその記載内容は何らかの形で、どこかの土地と関わりを持っていますので、地理的な情報を含んでいると言えます。
このような多様で複雑な地理情報を、総合して関連づけて活用し、古代都市研究を推進するという学術研究を目的として、デジタル化した地図を基礎に、GIS(地理情報システム)を利用して「奈良盆地歴史地理データベース」を作成し、公開することにしました。
具体的には、発掘調査の成果やさまざまな歴史的・地理的・文化的情報をデジタル・マップに重ねることによって、ある地点に関する多様な通時的情報を整理して、瞬時に引き出すことができます。また歴史的変化を視覚的に理解できるように、グラフィックな表示も重視することにしました。
このデータベースはGISを活用することによって、文字データに偏重することなく、総合的なデータベースとして発展でき、従来にない学際的な効果が期待できるものです。